舞台「ピアフ」を観てきました

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大竹しのぶさん主演、栗山民也さん演出の「ピアフ」を観てきました。

2016年版は再々演だそうですが、私は今回が初めて。

まぁ泣くだろうなと思ってたけど、劇場を出てからも涙が止まらず、街角で泣いてるイタイおばちゃんになってしまった(笑)

そんなに悲しいのか、と問われたら、断じて悲しい話じゃないと返したい。じゃあなんで泣くのさって話なんだけど・・・

なんでしょうねぇ。

激動の人生を生きたピアフの物語だから感動する。うん、そうなんだけど、じんわりと思ったのは、それだけじゃなく、どの人のどんな人生も、正面から見つめたら感動して泣けるんじゃないか、ってこと。

ただ生きて生きて、残して、死んでいく。

そんなただの人生も、感動に値しないなんてことない。やはり生きるって力強く美しい、そして残酷なものなんだわと感じて帰って来ましたよ。

 

あらすじは言ってしまえば簡単なもの。

貧民街で生まれ育ったピアフが、歌の才能を見出されて大歌手となる。表舞台に引き上げてもらったかと思えばどん底に落とされたり、若い恋人をとっかえひっかえしながらスターに育て上げたり、薬物と酒におぼれたり。

誰もが絶望的だろうと思っていても歌によって復活し、やがて年若く献身的な愛を注いでくれる人と出会い、安らかな死を迎える。

最愛のボクサーが飛行機事故で亡くなったり、愛人が運転する車で事故に遭ったりと、

「そんな定期的に不運にみまわれんでもいいのに!!」

と言いたくなる(悲)でもこの部分は、作り話じゃなく実際にあった話ですからね。ホントにすごい人生を送ったんだなぁと。

 

開演直後、赤いカーテンの向こうから、立っているのがやっとの状態のピアフがよろよろと出てくる。

その時のピアフが、身も心もボロボロなのがひと目で分かる。

もうね、開始1分で泣いてましたよ、ええ。

身体はボロボロで、手も腕もブルブル震えてて、焦点の合ってない目でマイクに向かい、でも歌いたい、あたしに歌わせろ!という気迫がこの人を動かしてる、というのが伝わってきて

ああもう、今 思い出しても泣けてくるぜ(涙)

あんな芸当、しのぶさん以外に出来ないのではないか。

しのぶさんの歌の技量については意見が分かれるとこかなと思う。コンサートで聴くような、ステキな歌声を聴きたいなら、観るのはやめた方がいいでしょうね。

現実のピアフは、歌詞の解釈と表現が素晴らしかったと聞く。それを踏まえるなら、しのぶさんのピアフは最高だったと思う。

そう、現実のピアフも、女優であるしのぶさんも、どちらもきっと

「表現者として生まれついてしまった業」

を持っているんだろうと思うの。

 

ピアフと話がズレるけど、お芝居を観ていて「好きだなー」「うまいなー」と思う人ってたくさんいる。だいたい、どの方も舞台に上がっているだけあって魅力的だし、本当に素敵な人が多い。

でも、お芝居である以上、頭のどこかに

「役者が演じている姿を観ている」

という意識があるのよね、当然。生の舞台を観ていると、目の前で生身の人が演じているのでなおさら。

ところが、その意識が完全に吹っ飛んでしまう芝居を観ることがある。技巧がどうだとか、発声がどうだとかそんなのが全部飛んでしまって、ただ目の前に人生がある、激情がある、悲しみがあるという感覚に陥ることが。

これまで、その感覚に浸らせてくれた役者さんって、私の経験の中では3人だけ。

白石加代子さん、内野聖陽さん、そして大竹しのぶさんです。

そういう感覚に落としてくれる役者さんって、演じること、表現することを宿命づけられてるんじゃないかと思ってる。

もちろんお仕事なんだから、ビジネスで割り切る点もあるでしょう。テクニックで全力を出さずに出来ることだって多くあるでしょう。でもやらずにいられない、自分のすべてを使ってこの人生を表現せずにいられない欲望というか感覚というか。

そんなものを持ってるんじゃないのかしらと思うの。

表現者として生まれ落ちたしのぶさんが、同じく「表現者として生きて、死んだ」ピアフを演じるから、鬼気迫るほどの「生」を感じて泣けるのだと思う。

本当に今この時にこの年代で、この演目を演じる大竹しのぶさんを観る、というだけで、他の芝居を観るのと違う価値があるんじゃないかと思うわ!

愛を求め続ける姿も、全身全霊で歌う姿も、不恰好でさえあるけどむき出しで、観ているこっちも丸裸にされるような気がした。

観てるだけでもエネルギーがいるので、とてもマチソワとかする気になれない(笑)

でもまた観たいなぁ。ラストの「水に流して」聴いてまた号泣したい。

 

 

なんせしのぶさんがスゴ過ぎて、他の方の話を全くしておりませんが・・・当然ながら皆さんステキでした。特にね、ディートリッヒと切ない秘書マドレーヌを演じた彩輝なおさんは、まったく違う役どころなのに違和感なく、役者ってやっぱすごいと思っちゃった。

ピアフの友人トワーヌを演じた梅沢昌代さんも、品のない夜の女から、だんだんと慈愛を感じる女に変化していくのが好きでした。

ピアフを取り巻く男たちもステキな歌声だったし、個人的に 声がとても大好きな辻萬長さんも出演されてて嬉しかった。

本当に観て良かった、と思った舞台でした。

ところでピアフの享年って47歳だったのね。ジュディ・ガーランドも享年47歳。なんとなくその事を思い出したわ。

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