ミュージカル「HOPE」を観てきました

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俳優・新納慎也さんが演出家デビューしたミュージカル「HOPE」を観てきました。

これね~、あまり話題になってないように思うんだけど観た方がいいよ!?(大声)

実はわたくし、HOPEは評判がいい、というのを聞いて以来ずっと気になっておりまして。

韓国で上演されたミュージカルの感想記事を書かれている方のブログも読んで(たしか2019年だったと思う)、日本でやらないのかなーと思ってた。

そしたら新納さん演出でやるというじゃありませんか!

もう絶対観る~って思った

そうそう、韓国上演時には、実際に裁判で争われたままの「フランツ・カフカの遺稿」だったそうなんですけど、今回日本での上演では架空の作家になってました。

何かの配慮によるものでしょうかね~

あらすじ

最終裁判の日、エヴァ・ホープは裁判所に向かう。30年にわたった裁判の相手はイスラエル国立図書館だ。
ホープが母から受け取った原稿は、高名な作家の未発表作品であり、遺稿は国の宝であると主張されていた。
ホープはなぜ原稿を手放さないのか。そもそもその原稿はなぜ、ホープの手に渡ったのか。
裁判の中で、ホープの人生が語られていく。

さすが韓国ミュージカル、と感じる旋律の良さは圧巻で、多彩な音楽が次から次へと続きます。

その一方で韓国ミュージカルあるあるのエログロが無い、という点には異色さも感じました。

エグさはあるけどね。

まあホープの人生が激動すぎる。ユダヤ人であること、母ひとり子ひとりであること、すべてが悪いほうへ悪いほうへ進んで行く。

生きるために、そんなにも辛い選択をしなければならないの?

いや実際にこうやって生き延びてきた人がたくさん、本当にいたんだよねと思うだけで、胸に重たいフタをされたような気分になる。

謎解きの要素もあって2時間あっという間。

もちろん個人差で好みはあると思うけど、私は何度も観たいと思う演目でした。強烈にオススメしたい。

主人公エヴァ・ホープを演じるのは高橋惠子さん。ミュージカル出演はなんと初めてとのことで、お歌はまぁそうだよねって感じなんですけど、さすが大女優。

この役を「ものすごく歌えるミュージカル女優」にやらせなかったのは良かったと思いました。

老女のホープは曲も出番も、そこまで多くない。けど心の叫びや擬人化された原稿(永田崇人さん・小林亮太さん)とのやりとりから、ホープの複雑な哀しさを表現しなきゃならない。

ホープを捕らえて放さない、いやホープが手放さない「原稿」は、彼女が愛されたかったものたちの代わりなのか。

その「もの」自体はどれほど頼りないものであっても、人は生きるために支えが必要。

何かを支えにしないと立っていられない人生の奔流の中、その行為は見苦しいと言い捨ててもいいの?

徐々に明らかにされるホープの人生を観るうちに、原稿を手放さないのは老女の醜い執着、とは言い難くなります。

惠子さんさすがのお芝居で・・・泣かされましたとも(涙

 

そのホープの若い頃を演じるのが清水くるみちゃん。

くるみちゃん、GOYAのホセーファもすごく良くて、これまでの中でナンバーワンだったんですけどね。

それを軽く超えてきまして!!

10歳にも満たない少女から、やがて何もかも失って立ち尽くすまで、めまぐるしく変わる表情と声色がすごかった。

ホープのママ、マリーは白羽ゆりさん。私は初めましてでしたが、お歌も芝居も巧くてビックリ。ホープに注ぐべき愛を、ある時から原稿に注ぎ続ける執着は鬼気迫るほど。

ママも生きるために必要だったんだよね、支えになるものが。娘を守るというだけでなく、生きるために。

「守られる場所」を原稿に奪われてしまったホープの気持ちだって、わかってなかったわけじゃない。

時期がくれば、原稿を渡すべき彼が迎えに来てくれる──そうすればまた、彼が自分を守ってくれる、自分はホープを守って生きていけると信じてた。

 

擬人化された原稿くん、私が観た回は永田崇人さんでした。最初は優しげで頼りなげなのに、どんどん力強く存在が大きくなっていくのが印象的。

最初はホープに守られていたように感じたのに、ラスト近くでは彼こそがホープを支えてきた、彼女が真に狂わずにいられた理由だと感じられました。

ダブルキャストの小林亮太さんはまだ観ていないんだけど、配信があるのでそちらで観る予定。永田さんの千穐楽も、ゼッタイ観ようと思ってるわ~!

上山竜治さんが、最初私にはちょっと意外に感じる役で出てきて「お、新境地?」と思ったら後ほど「ですよね~」って役でも出てきてね。

でも観ていると2つの役の底辺に共通するものがあって、ちょっとヒンヤリとした。

それは大沢健さんが裁判長と、マリーに原稿を託すベルトを演じてた事にも共通してました。

そのへんは、今回演出した新納さんの主軸が役者である、ってことと関係してそうだなと思ったり。

 

それにしても韓ミュって、激情をえげつない熱量でたたきつけてくる作品が多いイメージですけど(単にそういうのを好んで観てるという話)、HOPEはちょっと違うの。

語られていることは厳しく辛い。でも奥底に人への温かさがある。ここも、上演台本・訳詞・演出した新納さんのお人柄があるのかしらと思いつつ、思いがけずスッキリとした気持ちで帰ってきたのでした。

この週末に配信があるので、お時間の都合がつけばぜひ!

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