舞台「キオスク」を観てきました

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観てきてからひと月も経ってしまった!舞台「キオスク」を観てきました。

観に行こうと思ったのは一路真輝さん橋本さとしさんが出演されているのと、オーストリアのお話というのに興味が湧いたから。

先に朗読劇として上演され(再演もあったのね)、たいそう評判が良かったと耳にしたからでした。

観劇後、お話の肌ざわりに覚えがあるような、と感じて原作者を調べたら(遅い)、ローベルト・ゼーターラーだった!

この方が書かれた「ある一生」、すごく好きなの。いいですよ!

Bitly

キオスクとは全く違う話だけど、味わいは近しいものがあります。ああーそっか、だからか~と納得。

「キオスク」のあらすじ

1937年、オーストリア。自然に恵まれた田舎の湖畔で、母と二人暮らしをしていた17歳のフランツは、首都ウイーンに働きに出ることになる。

勤め先はキオスク。店主のオットーは戦争で片脚を失っているが、多忙なキオスクをひとりで切り盛りしていた。


キオスクの住み込み見習い店員となり、店主から、また多く訪れる客たちから、さまざまなことを学び成長していく。

中でも、店の常連客である精神分析学者フロイト教授との出会いは、フランツの心に大きな影響をもたらす。

同じ頃、ボヘミア出身の女性アネシュカと知り合い、恋に落ちるフランツ。

フロイト教授に相談したり、母に手紙を書いたりしながら、このまま静かに大人になっていけるように思えたが、ナチスの台頭によりフランツが信頼・敬愛する人々が少しずつ周りから消えていく。

理不尽な迫害、それを受ける人々、関わり合いにならぬように行き過ぎる人々。

自然の中で育った無垢な少年は、壊れたかのように思えたがそうではなかった。やがて彼はある行動を起こし、ゲシュタポに連行される。

故郷では母が、湖畔の我が家でいつの間にか失った息子の名を呼ぶのだった。

私の好みではない部分もありました

朗読劇はとても評判が良かったそうですが、観劇後、これは朗読劇向きなのかもとちょっと思っちゃいました。

と、いうのもところどころ、ファンシーな味付けの演出があって、なんだか心地がよくないなーと感じたから。

開演時、出演者が横一列に並んでちょっと楽しく歌うんですけど、終わってみればあれがどんな効果を狙ったものなのか謎。

背景の変化を表すのに、ペナントというかロールスクリーン?みたいなのを、役者さんが点滴のスタンドのように携えて行き来するのも、子ども向けの舞台のようで。

なんだか中途半端で紙芝居みたいだなと感じました。

こういう演出というか表現は好みなので、人によって違うと思うんですけどね。私にはNot for meでした。

あ、でもアネシュカが扇情的なダンスをするシーンの影絵は、すごく効果的だったと思う!

キャストの皆さんはステキでした!

一路さんがとてチャーミングなお母さんだった!マルガレーテって名前も素敵(そこ?

大人の女のちゃっかりさがあって、でもヤらしくなくて可愛い。

そもそもフランツが都会へ働きに出ることになるのも、母の経済的後ろ盾になってた男性の急死が原因だしw

キオスクの店主オットーとも、遠い昔に艶っぽい何かがあったようにも感じる。

「女」を武器にしてきましたよって雰囲気もありつつ、ベタついたとこがなくてカラっとしつつ品もあるお母さん、すっごく良かったです。

店主のオットーは橋本さとしさん。さとしさんって気難しい役が意外と似合うよね(意外とは

「新聞を読まないヤツにはキオスクの店主など務まらない」って教えに始まって、フランツにさまざまなことを教える。

店員として働くことだけでなく、仕事の美学や精神の志向性などなど。

大自然の中であまり難しいことも考えずに暮らしてきた少年が、はじめて人として磨きをかけられる場がオットーのキオスク。説得力がありました。

主演のフランツ役、林翔太さんは初めましてでした。声の通りが良くてセリフが明瞭だったなぁ。

ほぼ出ずっぱりだし、後半は精神的にしんどいシーンも多かったんですが、少年から青年へ、成長する姿にリアリティがあって良かったです。

あとビックリしたのがアネシュカ役の上西星来ちゃん。

めっちゃ野性的粗野セクシーだったw

ボヘミア生まれで、たぶん売春窟でもある場所で踊ってる女の子。

何を考えてるかわからないミステリアスさと、生き抜くためにいつも何かを出し抜いていなくちゃならない緊張感が良かったです。

星来ちゃん、舞台で観るのは2015年のカビ人間以来だから、6年ぶりかぁ。そりゃ大人になってるわね・・・。

山路和弘さんのフロイト先生も魅力的だったな~。あまり神経質そうではなくて、おおらかな感じ。

フランツに「本を読むのもいいが恋をしろ」っていうとこ、いかにもフロイトらしいし山路さんぽい。って伝わる?これ??w

大空ゆうひさん・吉田メタルさん・堀文明さんもたくさんの役を次から次へとやってらして忙しそう。

いつも思うけど、何役もこなす方って瞬時に別の人になるの、ホントすごいですよね。

大空さんが特に凄かったな。あ、でもフロイト先生のお嬢さんとゲシュタポくらい大幅に違うと、逆にやりやすいのかしらね。

後半、フランツが見た夢の内容をメモに書き、店中に貼っていくんですが、あれは多くの人たちがそれぞれの思考を携えてキオスクに来ては去って行く、そのことの暗示とも取れました。

ユダヤ人を受け入れている店として嫌がらせを受け、オットーはゲシュタポに連れて行かれ、片脚のないズボンだけが帰ってくる。

ラスト近く、絶対的に君臨するナチスに反旗を翻したフランツが、キッと振り向き笑ったのが印象的でした。

作者は好みだし、原作も読んでみようかな。

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