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舞台「藪原検校」を観てきました

世田谷パブリックシアターで上演中の「藪原検校(やぶはらけんぎょう)」を観てきました。

原作は井上ひさし氏。そして野村萬斎さん主演、栗山民也さん演出。

観ないわけにはいきません!(鼻息)

1973年の初演以来、世界中で上演されてきたこの演目、萬斎さんが演じられるのは2度め。2012年に上演された時は、私は今ほど自由に出歩けなかったので観に行けませんでした。

今だって本当は、こんなに自由に出歩いてていいのか分かりませんけど。気づかないフリで やり過ごしたいと思います。気づかないフリ、いつまで通用するのか。それは誰にもわからない(ひとりごと)

 

さて藪原検校ですが、検校という言葉でまず私が思い浮かべたのは 勝新太郎さんが主演した映画「不知火検校」。盲目の按摩が悪の限りを尽くし検校位に上り詰めていく、ピカレスクロマン的なお話です。

盲目の剣豪そして勝新太郎といえば「座頭市」だけど、座頭市も元々、勝さんが「不知火検校」を演じたことから生まれたんだそうですねー。そして不知火検校は、そもそも歌舞伎の演目として書かれたものなんだって。それらの事は今回初めて知りました。

では藪原検校はどんなお話かというと、盲目に生まれついた「杉の市」が悪事の限りを尽くし、最高位の「検校」に上り詰め、そして死んでいくまでのお話。不知火検校と似てますが、萬斎さん演じる杉の市の、清々しいほどの悪漢ぶりにはビックリ。

伝統的な芸能の世界に生き、ただごとではない品格と色気のある 萬斎さんの悪辣ぶりにうっとりしてきましたよ(笑)

さてさてこの先はネタバレになります。あらすじを知りたくない方はお読みにならないでくださいね~。

 

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開演前から幕は下がっていない舞台。煤けた暗い、がらんとした空間には、棒と赤い縄で仕切られた四角いくくりが。舞台のヘリには、まるでガードレールのように赤い縄が張られていました。

そして天井からも、舞台に向かってだらりと下がった2本の赤い縄。太さの均一なものではなく、ところどころ不恰好にふくらんだ赤い縄は、流れる血のようにも見えました。

客席の照明が落ちた真っ暗闇の中、三味線のように響くギターの音色。極限まで照明を絞ったような暗い舞台の奥から、案内役の盲太夫(山西惇さん)がゆらりゆらりと近寄ってくる様は、まるで悪夢の入り口みたい。

お話はすべて、この盲太夫が語る形で進んでいきます。

まずはその時代の、座頭と呼ばれる盲人たちの生き方について。当時、どのくらいの人数の座頭がいたか、座頭はどうやって糊口をしのいでいたのか。それに対する世間の対応はどんなものだったのかを説明するお芝居が。

盲人であることが疎まれ、蔑まれた時代の悲惨さがあぶりだされてちょっと苦しい。そののち、二代目藪原検校となる「杉の市」の生い立ちが語られます。

 

ところは塩釜。小悪党の魚屋七兵衛は、気立ては良いが不器量な女・お志保を嫁にする。

お志保の性根のやさしさに感化され、一度は改心した七兵衛だったが、お志保が妊娠したと聞き、お産の費用を捻出するため、峠を越えようと歩いていた盲目の座頭を殺してしまう。

生まれてきた赤ん坊は両親に愛され育てられていたが、盲人を殺した親の因果なのか、盲人として生まれてきた。因果を悔やみ父親は自刃。

このうえは座頭になるしかないという母の決意で、琴の市という座頭に預けられ「杉の市」と名付けられる。

杉の市は外見は母に似て醜く、内面は父に似て小悪党。しかも師匠の女房・お市とねんごろになるなど、素行の悪いことこの上ない。しかし語り物に抜群の才能があり、大量のご祝儀を稼ぎ出すため、師匠も破門できずにいた。

そんなある日のこと、師匠と共に浄瑠璃を語っていた場所に、仲間内でも評判の悪い佐久間検校が現れる。

座頭の最高位である検校がいる土地では、下位のものは商売をしてはならないという掟があった。その掟を盾に、稼ぎをかすめとろうとする佐久間検校に腹を立てた杉の市は、検校の手下を殺してしまう。

身を隠す前に、母に別れを告げようと実家に立ち寄るが、母の情人に罵られる杉の市。止めようと割って入った母を、誤って刺殺してしまう。

この上は駆け落ちしようと、師匠の女房であるお市を唆し、師匠を殺させるが、お市もまた師匠に刺されてしまう。金を持ち出し、一人きりで江戸へ向かう杉の市だが、途中で癪を起し苦しんでいた御家人を殺し、金と刃物を盗む。

 

坂道を転げ落ちるように悪事に手を染めていく杉の市。目が見えない自分が、目の見える者たちと対等になるには金の力しかない。盲人の中で最高位とされる検校の地位も、金の力で手に入れようと考える。

江戸で随一の人格者と知られる塙保己市(はなわほきいち)のところへ行ってみるが、そのあまりの清廉潔白さに弟子入りは止める。

しかし相容れないながらも、盲人として目明きに伍していくためには、何にせよ突き抜けた力が必要だという思いは、共通のものだとお互いに知ることになる。

塙保己市のところを去った杉の市は、酉の市と名前を変え藪原検校に弟子入りする。やがて金貸しの取り立てで弟子の中でも有力者となり、ついには師匠を殺して二代目藪原検校となる。

白袴に燕尾帽子、高下駄という検校のいでたちに身を包み、27歳という異例の若さで検校位につき、得意満面の杉の市だったが、襲名披露の日、死んだと思っていた元師匠の女房・お市が現れる。

自分と一緒にならなければ、これまでの悪事をすべて言いふらすというお市を、口封じのために殺害するが、その現場を人に見つかり捕えられてしまう。

検校位という最高の地位にいる杉の市はすぐには罰せられず、寺預かりにされていた。

同じころ、白川藩主松平定信は将軍補佐役になり、田沼意次のゆるめた世の中を引き締めるために良い策はないかと頭を悩ませていた。学問を通じて友となった塙保己市に、良い策はないかと尋ねてみると、保己市の答えは意外なものだった。

人心をひきしめ、倹約、勤勉、秩序の大切さを下々のものに自覚させるためには、その逆の浪費、怠惰、でたらめを徹底的に罰するべし。

すなわち、それらを併せ持った象徴ともいえる、杉の市を見せしめとして民衆の前で殺すべしというのだ。処刑の方法も、三段斬りという残忍なもの。

かくして興奮する見物人たちの前で、杉の市は処刑された。28歳の生涯だった。

 

この芝居はなんといっても、萬斎さん!本当に素晴らしい~!!

動きのひとつひとつがとにかく美しい!すっと右足を出す、それだけでも全身がぶれず、足だけが違う生き物のように出る。メイクも表情もかなりファンキーだし、下品なセリフも多いのにやっぱり品がある。

他の人にこの杉の市は出来ないよね~!と思いながら観てました。

杉の市のカリスマ性を表現する「早物語」のシーンはもう、口を半開きにして観ちゃったわ。圧巻とはこういうのを言うのね、と衝撃を受けましたとも。ずーっと薄笑いして気味悪い客だったと思う私(笑)

白餅と黒餅の闘いを源平合戦に見立てて歌うんだけど、話の可笑しさに加えてムーンウォークはするわ大物演歌歌手のモノマネはするわ(笑)

でもでも、飛び道具で笑わせてるわけじゃない。楽しくてワクワクする歌声と動きがものすごくて、あのシーンだけでももう一度チケット買っちゃうかもしれない(笑)早物語が終了した瞬間、場内からものすごい拍手が起きました。

杉の市の表情と立ち居振る舞いが、どんどん洗練されていく変化も感じられた。特に表情は、母親を誤って殺してしまうまでは小悪党のものだったのに、母の死体に取りすがって泣き、ふっと顔をあげた時はいっぱしの男の顔になってた。

もう何も失うものが無くなって、本当に悪の道に踏み出したことが感じられて、変な言い方だけど「お、生きる道が決まったんだね」って感じがしたのよね~。

劇中、ところどころに出てくる盲人に対する偏見や差別、「自分たちよりも不幸であるべき」と望む人々の気持ちを感じるたびに、酷いと思いつつ現代の自分たちに置き換えてちょっと身につまされたり。

悪の道を疾走してるのに、なんだか肩入れしたくなる杉の市はとても魅力的でした。

↑↑↑↑↑ ここまで ↑↑↑↑↑

 

盲人の生涯という重い題材でもあり、暗く悲痛な話のはずなんだけど、大笑いするシーンが多くてツラくなかった(笑)やり方は褒められたもんじゃないけど、何がなんでも上り詰めてやるという杉の市は、観ていて清々しささえ感じさせます。

パンフレットも読みごたえありました。初演の際の井上ひさし氏の談話、萬斎さんや栗山さんのインタビューをはじめ、キャストの皆さんのお話もたくさん載ってましたよん。

舞台美術も印象的だった。ラストの場面では、びっくりするほど明るい。あの明るさを怖いと感じるのは、演出の効果なのかなと思った。

あと最初は2本だった、天井からぶら下がってる赤い縄が、杉の市が悪事を重ねるたびに数が増えてましたね。シーンによって舞台に触れそうに下がってきたり、またちょっと上がったり。

まるで垂れ下がる血のように見える赤い縄は、殺意の象徴でもあり、上へ上へと向かう杉の市の上昇志向の象徴でもあり、自分だけは生き残ろうとする、いわば蜘蛛の糸的な暗喩でもあったのかなと思います。

言うまでもないけど役者はもう、皆さん芸達者で!芝居がうまいよあんたたち~(叫)!!

皆さん素晴らしいんですけど、特に語り部である盲太夫を演じられた山西惇さんがすごいなと思いました。

本当に今、人に話して聞かせるように喋ってましたけど、当たり前ながらあれ全部、台詞なんですよね。もんのすごい量の台詞ですよ。ビックリします。

お市役の中越典子さんも色っぽくてステキだったわ~。濡れ場は動きがアクロバティックで、身体の節々が痛そうでしたけども(笑)

どんな条件でも、どんな状況に生まれても、どんな人間でも「生きたい」という欲はあり、それは当たり前のこと。決して「ああいう生き方をしたい」とは思えないけど、心のどこかで杉の市を応援したい気持ちになる舞台でした。

野村萬斎さん演じる藪原検校は、世田谷パブリックシアターで2015年3月20日まで上演中です。>>詳しくはコチラで

藪原検校は何度も上演されてるそうですが、映像化されているのは2007年の蜷川幸雄氏演出版のみ。こちらは古田新太さんが主演されてますね。萬斎さんの杉の市とは全然違いそうだけど、これまたぜひ観てみたい。

  カテゴリー:映画・観劇  



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