ミュージカル「VIOLET」を観てきました

藤田俊太郎さん演出のミュージカル「VIOLET」を観てきました。

上演中止を経て、奇跡の再出発

イギリスキャストでチャリングクロス劇場で上演し、日本人キャストで東京芸術劇場プレイハウスで上演する、という予定だったこの演目。

日本での公演は、本来なら2020年4月から上演される予定でしたが、にっくきCOVID-19のおかげで中止に。

私もWキャスト両方観るつもりでチケットをゲットしていたのに、払い戻しになるという憂き目に遭いました。

仕方ないけどガッカリ・・・と思っていたんですが!

主人公であるヴァイオレットがバスに乗り込んだのと同じ「9月4日」から、「バスでの行程と同じ3日間」だけの上演が決定しまして。

いやもう絶対観たい、何席でもどの日でも(マチネなら)いいから~!!

という願いが届きまして、1回だけ観ることが出来ました。

私が観に行けたのは唯月ふうかちゃんヴァイオレット回。初日にあたる公演でした。

VIOLETのあらすじ

1964年、アメリカ南部の田舎町スプルースパインから、一人の女性がバスに乗り込む。
彼女はヴァイオレット(唯月ふうかさん・優河さん)。

12歳の時、父親の手から外れた斧によって顔に大きな傷を負ってしまい、25歳の現在まで人々の好奇の目や同情、心ない中傷にさらされながら暮らしてきた。

父も3年前に亡くなり、ひとりになった彼女は「あらゆる傷を癒す」というテレビ伝道師に会いに旅に出る。

奇跡により傷を消し、あわよくば美しい外見を手に入れる為、タルサまで人生で初めての旅に出る。その距離実に1500キロ。

3日もかかる長距離バスに揺られながら、ヴァイオレットは多人種、多様な価値観の人々に会う。

黒人兵士のフリック(吉原光夫さん)と、グリーンベレーに志願している白人兵士モンティ(成河さん)と行動を共にするうち、少しずつ心を開くように見えるヴァイオレット。

長い旅の先に彼女がたどり着き、手にしたものは───。

ラストを言っちゃうと、奇跡は起きずヴァイオレットの顔の傷は治らないのです。
まぁ・・・そうだよね。

しかし彼女の心には強い変化が起きる。

たぶん、この後も彼女は人々の好奇の視線を受けるし、心ないことを言う人もいなくはならない。

もう傷つかない、ってことはない。それでも、ずっと彼女の胸に炭火のように熾っていた

「この傷があるせいで、私の本質を見てくれる人はいない」

という思いは薄れたのだろうと感じられ、希望を感じるラストでした。

絶対にいつか、本来の客席配置で上演して欲しい

開演前の舞台上には、盆と同じ大きさの、ドーナツ状のセット。その中心部にぽつんとバケツ。そして天井から伸びた縄が、バケツにくくられていました。

オープニング、少女時代と現在のふたりのヴァイオレットがそのバケツの前で歌い、ドーナツ状のセットはゆっくりと上へ。

この井戸の底へ沈んでいくようなオープニングから、

「もし元々のプラン通り、盆を囲むように配置された客席から観ていたら、もっと没入感を感じられただろうなー!」

と、強く感じたわたくし。お話が進むにつれ、あちこちのシーンでそう感じられました。

絶対にいつか、本来の客席配置で上演して欲しいです・・・!

 

さて、バスに乗り込むヴァイオレットは、大人しげだけど内心すっごい毒舌。

顔の傷を見て驚き、おののく人には

「ジロジロ見やがって・・・自信満々みたいだけど、あんたの顔もたいしたことない

的な事を思ってる。のを、めっちゃポップな曲調で歌う(笑)

 

実は蓮っ葉で、可愛げのない女の子ヴァイオレット。でもバスの休憩所で、黒人兵士のフリックがバーテンから侮蔑的な扱いを受けると、それを許さない強さもある。

彼女は「見た目が違う」だけのことで受ける差別や中傷に傷ついてるし、負けるもんかとも思ってる。

でもさ、屈しない強さもあり賢いのに、微妙に無神経だったりするのよね(笑)

フリックにうっかり、肌の色を揶揄したように受け取れることを言っちゃったあと、弁解して

「肌の色じゃなく、あんたの顔がダメってことよ!」

って真剣に何度も言うとことか。ひどいよヴァイオレット!w

そんな感じでヴァイオレットの人物造形が、もう本当に素晴らしかったわ~。

ヴァイオレットが「女」としてなかなかだ、という表現があるところは個人的に好きでした。

曲がどれもスバラシイのです

「VIOLET」はとにかく曲が魅力的。

特に印象的だったのはまず旅に出る時のナンバー、「マイ・ウェイ(On My Way)」

これですね

【4/7(火)~26(日) 東京芸術劇場 プレイハウス】ミュージカル『VIOLET』PV

あああ~優河さんのも観たかったなぁ!!再演ホントお願いします!!

 

あと、「欲しい、全て(All to Pieces)」

ヴァイオレットが、映画スターになれるくらいの美貌をゲットするのよ!って舞い上がる曲。

横できいてるフリックとモンティが、「脚も誰々みたいに」って言うと「脚は問題ないでしょ?!」って切り返すとこ、すごく好き~。

でもね、この曲、舞い上がったあとに、せめてひとりだけ・・・私を理解し愛してくれたら・・・って切ない感じに変わっちゃうの。

若い女性らしくはしゃいでたと思ったら、我にかえってフッと白けたように。

威勢良く燃えていた火に、パサッとフタをして鎮火するみたいに、自分の高揚を閉じてしまう。

その心情は、誰だって感じたことがあると思うの。美醜について望みがあることを、人がバカにしてると感じる気持ち。あれはとてもせつない。

 

もうひとつ、すごくイイのがフリックが歌う「歌え(Let it Sing)」

奇跡は起きない、ヴァイオレットが傷つくだろうと思ったフリックが、彼女を止めようとして歌う曲。

すごく力強くてめちゃ難しそうなメロディですが、光夫さんの声で緩急自在に歌われて大変に気持ち良かったです(喜)

この劇中でいちばんストレートな応援ソングを、もっとも理不尽な差別を受けている黒人兵士のフリックが歌う。もうそれだけで泣く(涙)

あとねー、回想なんだけど算数に弱いヴァイオレットに、パパが賭けポーカーを教えるシーンがあるんだけど、その時の曲「引きの強さ(Luck of the Draw)」も好きでした。

2014年ブロードウェイ版のアルバムが出ていますのでぜひ聴いて!

俳優陣がこれまた良き

優河さんのVer.が観られず残念無念ですが、キャストについて。

まずは唯月ふうかちゃん!めちゃめちゃ良かったです!

天保十二年のシェイクスピアを観た時、

「ふうかちゃんって、実はけっこうドスの利いた声が出るんだなぁ」

と思ったんですけどね。中性的な少年ぽい声じゃなくて、大人の女性の迫力を感じる声。

ヴァイオレットでもしっかり聞けました。

歌声は澄んでて聴き取りやすいのはあいかわらず。すっごく良かったわ~。

屈折していて、獰猛で、聡くて冷静なのに奇跡が起きることは信じてるあやうさ。

本当に魅力的なのよ~!ふうかちゃんのイメージとは180度違うのに違和感なかった。

ふうかちゃん大人になったなぁ・・・俳優としても成長して・・・って

知り合いのオバチャンみたいな気持ちになったw

 

あ、ところでヴァイオレットの顔に特殊メイク的な傷を作っていないのは、「目には見えないヴァイオレットの心の傷に共感してもらうため」だそうな。

ニューヨークを拠点に俳優をされている、本田真穂さんのブログに書かれていました。

ミュージカル「VIOLET(ヴァイオレット)」。「美しさ」とは何なのか?に対するひとつの答え。
ブロードウェイ作品を続けて観たので、記事にしていきたいと思います。まずは、サットン・フォスターさん主演の「VI…

 

成河くんには珍しく軽佻浮薄な役?と思ってたら、やっぱりね、そんなことなかった。

勇敢である証明だとばかりにグリーンベレーに志願し、その実ベトナム行きを恐れているモンティが、ヴァイオレットにすがりつくシーンがとても印象的。

ちゃっかりしてて弱くて、ズルいけど純粋。成河くんだからこそ立ち上がるリアリティと、演劇らしさが混在して、「フツーなのに魅力的」な人物像になっていました。

歌い方がすっごくセクシーだったのが、個人的に意外で新鮮。とても嬉しかったです(?)

 

吉原光夫さん演じるフリックも、ヴァイオレットに傷メイクがないのと同じように、顔を黒く塗ったりはしてない。

だからこそ、「同じなのになぜ?」という、差別の理不尽さがすごく強く感じられる。

友人のモンティに対しても、ヴァイオレットに対してもとてもフラットで、「できた人」ぽいけど弱さもあり。

誰よりも早く、ヴァイオレットの顔の傷でなく、心に深く刻まれている傷に目を向ける人。

ヴァイオレットの、外見でなく内面の変化に気づいてくれた人。

ガラが悪くも気弱にも見える光夫さん(褒めてます)だからこそのフリック像だよね~。

ふうかちゃんヴァイオレットとは身長差がありすぎて、ちょっと揉めるシーンでは

「ふうかちゃん怖くないのかな」

などと余計なことを考えたのはヒミツです。ふうかヴァイオレット全然ひるんでなかったけどw

 

ヴァイオレットのパパを演じるSpiさんも良かった~朴訥として、粗野な雰囲気もありながら娘を傷つけてしまった後悔を滲ませるパパ。

ただ「すまない」と下を向くのではなく、ヴァイオレットが生き抜いていけるように具体的な方法を教え込む、愛情深いパパ。

そのパパに、ヴァイオレットがずっと胸に秘めていた想いをぶちまけるシーンの、Spiパパの顔が・・・!(号泣)

 

畠中洋さんのテレビ伝道師も、カリスマ性と胡散くささ、俗物ぶりもめちゃ好きだったし、谷口ゆうなさん・エリアンナさんの歌声も素晴らしくてアガったし!

島田歌穂さんの振り幅はもう、さすがとしか・・・おっとりお節介おばあちゃんからメンフィスの娼婦に、そしてまたおばあちゃんに。

よくそんなに瞬時に変われますね!?(プロだから

 

とりとめなく書き散らしてしまったけど本当に観られて良かったです。

表層の違いでなく本質を観ること、心についた傷は身体の傷と同じようには癒やせないこと、人が人を理解するために「見る」べきものは何なのか?

えぐられる部分も多いし簡単にハッピーエンドとは言えないけど、光を感じる舞台でした。

カーテンコールは1回だけかな、と思ったら存分に応えてくれて嬉しかった。客席を間引いてるなんて思えないくらいの万雷の拍手でした!

たった5公演の上演だったなんて、本当にもったいない。絶対にまた上演して欲しい、願わくば同じキャストで、本来のセットプランで。

VIOLETの旅に同行したいです!

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