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舞台「正しい教室」を観てきました

「人物」という円柱がある。

観客はその円柱のまわりを、らせん状に降下しながら眺めていく。すると初めは見えなかった人物の根底が、徐々に露わになっていく。

円柱の立つ床に着地した時には、もう最初に感じた印象はなく、むき出しになった「人」が見える。

蓬莱作品を観ると、そんな印象を受けます。

「正しい教室」は蓬莱竜太氏が作・演出した舞台でした。主演はミュージカルスターの井上芳雄さんですが、歌いません(笑)

芳雄くん主演、蓬莱氏演出というだけでも観たいと思うのに、そこへ私の大好きな鈴木砂羽さんもご出演。それはもう、観ないわけにはいかないわ~。

という訳で観に行ったんですが、これ、「禁断の裸体」より先に観たんですけど、なぜか記事が後になってしまったわ。

ってなぜかってことないわね。私の愛する小西遼生さんを追って「十二夜」を観に、大阪まで行ったりしてたせいです(笑)

 

正しい教室、私が観たのは東京・渋谷のパルコ劇場。先行抽選でチケットを取ったんですけど、発券したらセンターだけどY列だったのね。。

えーものすごい後ろ?!と思ったら、パルコ劇場はなぜかX列から始まっているため、前列2列目だったのでした~(喜)

前から2列目どセンター・・・嬉しいけど、どうして遼生さんのお芝居の時にこれが出来ないのか?!と悶々としたのは内緒です(言ってる)

さて「正しい教室」は休憩なし、ぶっ通し2時間のお芝居でした。場面転換もなく、小学校の教室のひとつで進むお話は、なかなか見ごたえのあるものでしたよん。

 

とある小学校の教室。土曜日でお休みの教室には、担任の菊池(井上芳雄さん)が父兄と電話している。

受け持ちの女子が書初めの課題「希望」に反して書いた「絶望」について、何か問題があると考えられるので、家庭訪問をする段取りをしているところだった。

この日は菊池の小学校時代の同級生たちと、この教室で同窓会をする予定だ。母校である小学校の教師となった菊池は、父兄からも児童からも慕われる、理想的な教師として評判だった。

やがてかつての同級生たちが、少しずつ集まってくる。

今はレストランを経営しているヒカル(高橋努さん)、家業の工務店を継いだ坂田(岩瀬亮さん)、役所に勤める恵子(小島聖さん)は、それぞれの現状を愚痴交じりに語りながらも、久しぶりに仲間に会えたことに喜んでいた。

小学生時代とは様変わりした水元(有川マコトさん)も加わったところで、菊池はこの同窓会の主旨を皆に話す。

この同窓会は、離婚し、幼い息子も亡くした小西友紀(鈴木砂羽さん)を慰め元気づけようと、菊池が企画したものだった。

友紀はかつてクラスのマドンナ的存在だった。菊池は昔、友紀が好きだったらしい。

その友紀が、妹の蘭(前田亜季さん)に付き添われて現れた。かつての面影はあるものの、人が変わったように暗く、みすぼらしくなっている友紀に戸惑いを感じながらも、同窓会は始まった。

しかし同窓会は思わぬ人物の闖入により凍り付く。

突然やってきたのは、かつて菊池たちの担任だった寺井(近藤正臣さん)だった。

寺井は乱暴で嫌味な指導で、子どもたちに嫌われていた。口が悪く態度も悪いのは今も変わらない様子。

恵子は「あなたがいては私たちは楽しめない、招待状が行ったのは何かの間違いだから帰ってくれ」と告げる。しかし招待状を出したのは友紀だった。

友紀は自分の幼い息子が公園の池に落ちた時、助けに飛び込めなかった。それは小学生時代に水泳の授業で、寺井に無理にプールへ突き落された経験が、トラウマになっているからだという。

だから寺井に慰謝料を払えという友紀。その言い分には、寺井だけでなく同級生たちも違和感を感じる。

やがて少しずつ少しずつ、それぞれの中にある鬱屈や悩み、小学生時代に誤解したままだった出来事が表面化していく。

かつて担任した子どもたちのあれこれを、驚くほど明確に覚えている寺井。子ども時代の心の中にあったズルさ、汚さ、愚かさをひとつひとつあげつらうが、本質を掴まれ見据えられていたことが分かり、誰も反論できない。

そうして話すうちに、それぞれの現在の鬱屈や悩み、抱えている闇が暴き出されていく。

 

と、いうお話なんだけど・・・

これ、あらすじ書くの難しいわ。ひとりひとりが言ったこと、やってることが見事に繋がっていくんで、バッサリ削っても話が通じると思えない(汗)

ネタバレを気にせず、乱暴に書きますと、まず寺井先生はただのダメ教師ではなかった。彼は生徒ひとりひとりの本質を見抜いていたし、対処の仕方も「先生として」というより、大人として、といったもの。

それぞれを良い方向に導こうなんてことはせず、そのままだと将来遭遇するであろう「辛い目」に、早めに遭わせていたともいえる。

ビックリするほど当時の生徒の動向を知ってて、でも当時は生徒たちに何も告げずにいて。誤解されてもそのままにしてた。

優等生だけどズルい菊池の事は嫌いで、それを隠そうともしなかった。

「お前を嫌いな人間もいるってことを、教えてやったんだよ」

という寺井は、実際いたらムカつくだろうけど、お芝居で観てると爽快感があったわ(笑)

 

井上さん演じるかつての委員長、菊池は、現在も優良教師。でもその八方美人ぶりが災いして、女生徒に逆恨みされてた。教師を辞める羽目になるかもしれないくらい、ピンチな状態に陥ってる。

その逆恨み生徒が書いたのが、冒頭に出てくる「絶望」の書初めなんだけど、それに対する寺井の弁舌がふるってた。

「わざとらしく書初めに『絶望』なんて書くような女は、放っておけばいい。こんな図太いアピールが出来るやつは、かまってやるとつけあがる。むしろ、そんなアピールができない、『希望』と書いてるやつの中に、救ってやらなきゃならないやつがいるんだ」

このセリフはホント真実を突いてると思ったわ~。

でも、うまいなと思うのは、寺井が「実は良い先生だったのね」というオチで終わらないところ。一理ある、真実を突いてるとも感じるけど、

「そう言うけど、後付けの言い訳じゃないの?」

とも受け取れる。どう受け取るかでかなり印象が変わってしまう寺井の人物像が面白い。

そしてこんな教育法にはメリットデメリットがあるのは当然で、菊池が

「あんたみたいな教師になりたくなかった」
「嫌われないようにと必死にやってきた」
「こういう教師が求められてきたんですよ!」

と叫ぶところ、本当にヒリヒリして苦しかった。そして、他の事には一切謝らないと言い切っていた寺井が、その菊池の叫びに対してだけ、

「すまなかった」

と頭を下げるのが何とも言えず苦しい。ここでは、寺井なりに真剣に「教育の成果」を信じていることが現れてたと思います。

 

かつてみんなの憧れだった友紀は、鈴木砂羽さんの可愛らしい声も相まって幸薄い女、の印象。

なのに、子どもを亡くしたのが実はパチンコに熱中している間のことだったらしい、というのが分かってからの、みっともなさったら!

砂羽さんやっぱりうまいわ~大好き!

どうやら教室の外で 妹との話を聞いてたらしい菊池の足元に すがって泣くんだけど、この時の井上くんの表情がもう何ともいえない嫌な感じで良かったわ。

菊池は表面をつくろうことには長けているが、むき出しの「人」を受けとめる器量はないってことが、このシーンで露わになってたと思う。

醜悪で身勝手で堕落した人と、自分は関わりたくない、でもそう思ってることをさらけ出すのもためらわれる、そんな気持ちがにじみ出てる場面でした。

「どうなっていくんだろう」とちょっとドキドキしながら観てて、よほど後味悪く終わるのかと思えば、ほんのり泣かせて意外にも爽やかに終わる。

なんてニクい芝居なのかしら!

ずーっと憎々しい寺井が、最後にかつての教え子たちに「先生」と呼ばれ、カレーを一緒に食べましょうと言われてメモを見るところ。

これがあなた、泣けるったら(涙)

責められても、罵られてもふんぞり返って悪びれない態度から一転、頼りなさげにメモを探り、か細い声で

「俺、今日はメシ、食ってきた」

と答える。それが何ともいえず、寺井の孤独と心細さ、経済的な逼迫などを感じさせる。

それまでの「かつての怖くて嫌な先生」から一転、理解されず感謝されなかった人生を歩んだ人、を感じさせて泣けるのですわ。

ひとりひとりの人物像がくっきりとしていて、お芝居が終わってからも登場人物の人生について考えてしまう、そんなお芝居でした。

ラストシーン、教室に貼りだされた「希望」の書初めを見上げ、その一枚に手をかける菊池。もう、教師として彼らに関われるかどうか分からない中、チャンスがあるならやり直したい、という彼の気持ちを感じるラストシーンでした。

 

作品中では杖をつき、脚が思うように動かない寺井を演じていた近藤正臣さんが、カーテンコールでは杖を持ち上げ、軽やかに歩いていらしたのがステキでした(笑)

パンフレットの表紙も、めまいを誘うようなデザイン

 

演出家と主演俳優の対談もたっぷりで、作品の理解に役立ちましたわ

 

タイトルが正しい教師ではなく教室、となっているのは「環境」もしくは「ハコ」を意味してるのかしら。

同じ教師に同じように習っても、人の生きざまは千差万別。

教育が人を作るのは紛れもない事実だけど、与えられた教育だけが自分を作るのではなく、そこから何を得るかは自分しだい。

そんなことを含んだタイトルなのかなって思いました。

正しい教室は今日(2015/04/19)が千秋楽かな。もう公演は終わってしまいましたが、再演や放映があった際にはぜひ!おすすめしたい作品でした~。

  カテゴリー:観劇・映画  


2 Comments »

  • 芳雄王子と呼んで,ファンのくせに,今回は見送ってしまった「正しい教室」

    近藤正臣さんのセリフが近藤さんのお声で聞こえてしまいました。

    うーん。
    やっぱり観に行くべき舞台でしたね。。。

    砂羽さんと芳雄王子が同級生っていうのが,どーも。
    砂羽さんの方がかなりお姉さんに思ってしまうのでした。
    芳雄王子の印象が,いつまでもデビュー当時のままに近いからかもしれません。

    私もちゃんと観劇感想UPせねば!(≧▽≦)

  • >加奈代さん、いらっしゃいませ~

    よしお王子さま♡
    歌わないけどステキでしたよん。

    砂羽さんの方がまぁ、本当にお姉さんですけどね。
    でも違和感なかったです。砂羽さんにしては、珍しい鬱屈した役どころだったからかな。

    コメントありがとうございます♪


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