舞台 ロスト・イン・ヨンカーズを観てきました。

パルコ劇場で上演中の、「ロスト・イン・ヨンカーズ」を観てきました。

三谷幸喜さんが演出する舞台を観るのは初めて。

大好きな中谷美紀さんが出演されるということもあって、そりゃもう楽しみにして行きました。

そして期待にたがわず、どころか期待以上に良すぎて夢心地で帰ってきましたともさ。

渋谷パルコなんてものすごく久しぶりだったなー。ディスプレイされてるお洋服が相変わらずカブいてて、「さすがパルコ」と思いつつ9Fへ。

パルコ劇場は初めて行きましたけど、ロビーが狭い!と思ったら劇場自体がけっこう狭い!

私の席は最後列から5番目くらいの、後ろの方だったんですが、舞台がすごく近く感じたわよ(笑)

ほぼ中央の席で、とても観やすくラッキーでした。客層は年齢層が高めで、「大人の観劇」って雰囲気でしたね。

ロスト・イン・ヨンカーズは三谷幸喜さんが影響を受けまくっている、ニール・サイモン氏の戯曲。1991年にブロードウェイで上演され、数々の賞に輝いた名作です。

あまりに好きすぎて封印していたらしいんですが、今回パルコ劇場40周年の記念ということで、演出に挑戦したんだそうですね。

家族の愛と、生き抜くことを教える厳しさ。そしてその厳しさが、誰よりも自分自身を傷つけてしまう哀しさを描いています。

出演は中谷美紀さん、松岡昌宏さん、草笛光子さんほか7人で演じられる舞台で、前半85分、後半85分という長いお芝居でした。

さて、ここからはネタバレよん。

 

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ジェイとアーティの兄弟は、父親が出稼ぎに行っている間、疎遠にしていた厳格な祖母(草笛光子)に預けられることになる。

祖母は鬼将軍のように厳しい人物で、言うことは絶対に正しいが温情のかけらもない女。父親の妹であるベラおばさんと2人で暮らしていた。

ベラ(中谷美紀)は可愛らしく魅力的だけど、猩紅熱(しょうこうねつ)の後遺症で頭が弱い。35歳だが頭の中身は10代半ばといったところで、興奮すると自分を抑えることが出来なくなる。

他に行くところのない兄弟は、父親が出稼ぎから帰るまでこの祖母・伯母と暮らさねばならない。優しい母を病気で亡くしたばかりの兄弟には、窮屈でツライ日々が続く。

おまけに、出稼ぎに行った父は不整脈になっただの、過労で入院しただのと兄弟を心配させるような手紙ばかりよこす。

不安になっている兄弟に、最近なんだか浮かれているベラが打ち明け話をする。

映画を観に行っている劇場に勤めている、案内係の男性にプロポーズされたというのだ。

その男性は読み書きが出来ない。つまりベラと同様に知能に問題がある。でも夢があって、自分のレストランを開きたいそうで、ベラは資金面も含め、彼の手助けをしたいのだ・・・という。

その話の中で、祖母は実は大金を持っているということを知ったジェイは、そのお金を見つけて父親に送れないかと考える。

止めるアーティの言うことを聞かず、夜中に店を家探しするジェイ。そんな時、父親の弟であるルイおじさん(松岡昌宏)が帰ってくる。

ルイは、親戚の噂によると大物ギャングの手下だという人物。アパートの壁の塗り替えの間、泊めてもらいに来たというが、拳銃を持っていたりしてかなりキナくさい。

でも軽妙洒脱で男前、ちょっと危険な香りがするおじさんに兄弟は憧れる。父親やルイの子供の頃のエピソードや、昔からおばあちゃんがどんなに怖く、厳しく、強かったかを聞く。

おばあちゃんは昔から強く、厳しく、頑固で冷徹な人だった。でもルイはおばあちゃんを尊敬している。好きじゃないけど、嫌いじゃないという。

「あの人に育てられたから、俺は今、こんなにタフだ」

それまで知らなかった不自由、理不尽な生活と共に、ルイが纏う「別の世界の存在」も知り、大人になっていく兄弟。

 

そんな時、ベラがついに結婚すると言い出す。姉のガートも呼び家族を集め、料理をふるまい、はしゃぐばかりでなかなか話し出せずにいるベラに、助け船を出すジェイ。

しかし相手の男性が読み書きできない中年男だと知ると、ルイもおばあちゃんも怒り出す。パニックになったベラは興奮し、それまでずっと胸にしまっていた孤独をぶちまける。

「赤ちゃんが欲しいの。私は赤ちゃんをうんと抱きしめて、愛して育てるの。母さんは私を抱いてくれなかった。厳しく育てる、それが母さんの育てかた。それは知ってる。でも、私は愛されたかった!子どもを産んで、愛したい!愛してる人に、愛されたい!」

結婚してもいいと言って、と懇願するベラを残して部屋に閉じこもるおばあちゃん。ベラは家出し、ジェイとアーティはおばあちゃんを慰めようと気を使うが、うるさがられてしまう。

「日曜日なんだ。外で遊んでおいで」

追い出された兄弟と入れ違いに戻ってくるベラ。男とは結婚しないという。男は実際のところ生活の変化を望んでいなかったのだ。

「お前は結局、子どもなんだ。お前は子どもでいいんだ」

という言葉に、ベラは子どもじゃないと叫ぶ。

「お母さんは知らない。私は子どもじゃないわ。もう、ずっと昔から子どもじゃない。愛し方だって知ってる!愛し方を知らないのは母さんよ!」

何よりも欲しかったぬくもりを与えられなかったために、男たちと刹那的な関係を持っていたことを激白するベラに、おばあちゃんはショックを受ける。

「誰かに可愛いって言って欲しかった。私に触って欲しかった。愛してるって言ってくれた人もいたけど、信じなかった。本心が見えたから・・・でも彼は違ったの。彼は本当に私を愛してくれた。ただ、暮らしを変えるのが怖くて私とは暮らせないのよ」

何もかも見通すことで君臨し、娘を守っていたと信じていたことが否定され、おばあちゃんはショックを受ける。

「ドイツからアメリカへ移民してきて、子どもを2人死なせてしまった。あの時、私は心を捨てた。子どもを死なせた私への罰。子どもたちを、何があってもひとりで生きていける人間に育てることが、私の責任だった。恨まれても、疎まれても、子供たちに生き抜くことを教えるのが私の使命だった」

お互いにずっと向き合わないできた問題にぶつかることで、理解を深めることが出来たふたり。

やがて出稼ぎから父が帰ってきて、ジェイとアーティがおばあちゃんの家を出て行く日が来る。

ジェイとアーティはもう、おばあちゃんをやみくもに恐れてはいない。相変わらず厳しいけど、ちょっとだけ本心を見せてくれるようになったおばあちゃん。またすぐ遊びに来るよ、と約束し、おばあちゃんの家を後にする。

誰もいなくなった部屋の中で、おばあちゃんはひとり、満足したように頷く。

↑↑↑↑↑ ここまで ↑↑↑↑↑

 

いやー、見ごたえある舞台でしたよ・・・。

これ、カラッとした喜劇なんですよ。今、自分で書いてて

「ストーリーだけ読むとすごく暗い話みたいだな」

と思ったけど、喜劇なんだよ~!

兄弟のやりとりも、なんだか頼りないお父さんも、芝居がかってキザなルイも、ほんとに嫌味がなく笑えてしまう。

おばあちゃんが吐く、厳しく冷淡な台詞も、あまりに度が過ぎてて笑っちゃう。

中谷美紀さん演じるベラも、ちょっとネジがゆるんでるけど明るく可愛い。人の話を全然聞いてなくて突っ走ってる感じが可愛くて、これまた笑っちゃう。

中谷美紀さんの声も動きも最高にチャーミングで、ベラにものすごく感情移入しちゃうのよー。

 

すごくウマいなぁと思ったのは、おばあちゃんが絶対的に君臨しているのは、「正しいから」だというのが随所に出てくるところ。

物語の序盤、子どもを預かれない、と突っぱねる時に

「私を酷い女だと思うか?冷酷だと?その通りだろう。でも、これでお前たちは強くなる。誰にも助けを求めず、自分たちで生きて行くことが出来るようになる。そしていつか私に感謝する。これが私の出した結論だよ」

・・・この台詞を言い放つ草笛さんが本当に厳しく、そして美しいのですよ。草笛さん自体が美しいってこともあるけど、それだけじゃなく

「自分の中に確固たる信念があり、揺るがない強さ」

があふれていて、ただの意地悪ばあさんには見えないの。

そう、おばあちゃんは正しい。だからみんな逆らえない。論理的に絶対に正しい。家族としての絆は粉砕してるけど。

ルイだけはおばあちゃんにビビッてないようにふるまってるけど、要所要所でやっぱりおばあちゃんには弱い(笑)

 

崩壊している家族の再生、が主なテーマだけど、中には色んな問題が含まれてました。

愛情がなくては厳しく出来ない、というのは、何かを教える時にしみじみ感じることだよね。後輩に仕事を教えるんでも、かわいくないヤツは叱る気にもならんし。

自分の子どもに、生き抜くことを教えるとなればなおさら。

とはいえ、普通は可愛がりたい欲求や、子どもに愛されたい気持ちが先で、ここまで厳しく接することは出来ないわ~。

事が起きる毎に、おばあちゃんの決意、悲しみ、孤独がどんどん浮き上がって、ホント泣けてくる。

「いいんだよ、責任より、愛情を与えることに溺れたっていいんだよ!?」

と言ってあげたくなるほど、自らを厳しい道に追い込んできたおばあちゃんを、草笛光子さんが素晴らしい存在感で演じてました。

 

個人的にね、私は7歳・8歳の頃に、とても厳しい父方の祖母に預けられてて、その時の暮らしがものすごく辛かったの。

祖母が母を嫌っていたのも今回のお芝居と同じだったし、私も子供の頃、理解されにくい子どもで愛情に飢えてたから、お芝居を観ていてすごく深く胸をえぐられるような感覚があったの。

私はもう50歳近くて、私を預かってた頃の祖母の年齢に近い。ひたすら甘やかされて育った当時の自分が手元にいたら、そりゃぶん殴ってでも躾けなきゃと思っただろうよ、と今になったら分かります。

私の母は、私をすごく愛してくれてたけど、自分が母親を知らないで育ってて、常識的に娘を育てることが出来なかったのね。

それで野犬のように育っていた私を、祖母は手元に置いて躾けようとしてくれたんだなーと、これは自分が今大人になったから(そして今、幸せだから)思えるんだけど。

祖母には感謝してるけど、やっぱりひと言でいいから「お前が大事だ」って言って欲しかったなと思う。

子どもの頃は、

「おばあちゃんはお母さんが嫌いだから、お母さんが生んだ私が憎いんだ」

と思ってましたからねぇ。いや、実際そういう感情もあったのかも知れんけど(笑)

強さをはぐくんでくれた人の事は尊敬するし、感謝もするけど、やっぱり愛しいという気持ちにはならない。

 

この前も思ったけど、やっぱり愛って難しい。愛情を注ぐにしても

「今、そそいでるよー」

ってアピール(抱きしめるとか、言葉で言うとか)しないと伝わらない。それでいて、

「ほらほら、注いでるんだから!」

って強くアピールすると鬱陶しくなるし。特に、血のつながった家族間では、そういうさじ加減が難しいよね。

芸術の秋、またまた愛について考えるきっかけになったのでした。

ロスト・イン・ヨンカーズは役者も脚本も最高、美術も良くて、すごく良い舞台でした。パルコ劇場以外の公演は、まだチケットがあるみたいですよん。(※2013年10月12日現在)

良かったらぜひ!

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コメント

  1. Yoshiko より:

    なるほどね〜。鼻息が荒い理由がよくわかりました。中谷美紀、大好きだからみたいなぁ。何よりもまみろうさんがお祖母様に抱いていた感情が整理できて、今の幸せに感謝しているのがジーンときました。家族との関係や子育てで迷うこともあるけど、今の自分のベストを尽くしていくしかないんだよね〜。情報が飛び交う中、きちんと向き合っって言葉をかけることの大事さを改めて考えました。ブログ、ありがとう。

    • まみろう より:

      >よしこせんせい~、いらっしゃいませ~。

      中谷美紀さん、ものすごく可愛かった!
      そしてやっぱり、凄くうまかった!ですよぅ。
      12月に神奈川で公演する分は、まだチケットがあるみたいですよー。

      大人になると、当時は分からなかったことがなんとなく理解できたりしますよね・・・。
      今では、あれも祖母なりの愛情だったんだろうと思えるようになりました。

      若い頃は「くそばばーめー」とか思ってましたけど(笑)

      親子だろうと、言わないと分からない事は多くありますよね。
      うちもこれから思春期とか色々あるだろうし、息子に気持ちを伝え続けたいと思ってます。

      コメントありがとうございます!

  2. はる より:

    初コメントです。

    明日、関西千秋楽を観に行く予定です。
    内容的に難しいのか?とか思ったのですが、あなたの内容の濃いブログを読ませていただいて、更に楽しみになりました!

    ホントに楽しみ。ワクワク^^;

  3. まみろう より:

    >はるさん、初めまして~。

    良いお芝居でしたね。
    同じような感想だったみたいで、何よりでした。

  4. 匿名 より:

    はじめまして。
    私も先日観てきました。

    ものすごく感動したし、衝撃を受けたのに、上手く説明できなくて、感想をアップされている方のを見て勉強しようと思って、こちらにたどり着きました。

    素晴らしい感想ですね!
    舞台のポイントがしっかり伝わりました。
    このような表現は私にはとても出来ませんが、勉強になりました!

  5. まみろう より:

    >匿名さん、はじめまして。

    お返事が遅くなってしまい、申し訳ありません!

    お褒め頂き嬉しいです^^
    お芝居の感想って人に伝えるの、難しいですよね~。
    私も勉強中です!読んでくださってありがとうございます。

    コメントありがとうございます。