夜、海へ還るバス

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少年アシベは、もう20年前の漫画なんですね。

可愛らしいんだか可愛くないんだかわからない絵柄で、ほのぼのなんだかシュールなんだかわからない話をたくさん描いていた森下裕美氏、いつの間にか大作家になりましたね。

この人の漫画は「少年アシベ」も、「ここだけのふたり」も、「ひまわり武芸帖」もみんなそう。

一見可愛らしい絵柄なんだけど、話はブラックでシュール。でも読んでて不快じゃない。

根本的には今も人物造形って変わってないけど(「大阪ハムレット」しかり)、これはその作風は壊さず、でも異質。

結婚を間近に控えて、自分がレズじゃないかどうか確かめたい女と、それに協力する婚約者。

え?何それ?って

思う設定だけど、森下氏ならではの描写で、不思議と受け入れられてしまう(笑)

女性同士の愛の物語、というと同性愛じゃん、インモラルじゃんと感じてしまうけど、全然、性愛については全く問題じゃない。

「人として愛されること」「誰かに必要とされること」でも、「自分にとって、その相手は愛せる人ではなかったら」

それぞれの人間の間に横たわる愛の形と、拒否の形。

主人公夏子と、婚約者タカちゃんの「愛」、苦労した果てに大成功した母への「感謝と憎悪」、愛のない結婚生活の中でとてつもない孤独を抱える美波との「愛と理解」、美波と夫の「愛のない結婚生活」。

この中でまずこれは無いだろうと思えるのはタカちゃんの理解(笑)

夏子と美波が関係したと知った後の態度はまぁ、普通と思えるけどね。

こんな男性は現実にはいないでしょう。

母の胎内へ還っていく、そのためにそれまでの自分が一度死ぬと象徴されるラスト、女性なら泣けて仕方ないのでは。(特に子育ての経験のある人はね)

森下裕美氏、西原理恵子氏とはまた違った意味で、無頼になりつつありますね。

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