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舞台「THE BIG FELLAH(ビッグ・フェラー)」を観てきました

世田谷パブリックシアターで上演中の、内野聖陽さん主演の舞台「THE BIG FELLAH」を観てきました。

IRA(アイルランド共和軍)のNY支部メンバーたちの30年間を描く翻訳劇で、難しそうだなーと思いながら観に行きました。実際、難しい面もあるけど、前知識がなくても夢中で観られてよかったわ~。

役者の皆さんも、演出も美術も素晴らしかった!

イギリスの劇作家であるリチャード・ビーン氏の脚本を、小田島恒志さんが翻訳、森新太郎さんが演出なさった舞台。IRAという、日本人には馴染みのない組織の話だけど、やりとりは軽妙で全然飽きない。

 

登場人物それぞれがどんな人なのかもすぐに理解できるし、セリフに出てくる言葉のひとつひとつについてはよくわからなくても、その団体・出来事が舞台上の人々にとってどんな意味を持つのかは掴みやすかったと思います。

そしてとにかく、内野さんはじめ出演されている役者さんたちが!すごい!!そりゃもう、濃密で上質な芝居を見せてもらいましたよ~。そして、個人的には音の効果がすごく印象的でした。

私が行った回は、ぴあスペシャルDayということで、有料パンフレットがプレゼントでいただけました。うれしいぞ。

さて、ここからはネタバレいたします。これから舞台をご覧になる方は、お読みになりませんように。

 

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幕が上がると、そこにはテーブルと、キルトを身に着け、葉巻をくわえたコステロ(内野聖陽さん)がいる。

彼はIRAのNY支部の幹部であり、本国アイルランドで戦う同胞たちのために、NYで資金集めをしている。コステロは経済的にも成功したひとりであり、皆から「ビッグ・フェラー」と呼ばれている人物。

ブラッディ・サンデーの追悼集会で演説をする彼は、イギリスへ対する報復と、IRA組織をより強化させようと語り掛けている。

冒頭のこのシーンがね~、まず本当に素晴らしい!!このちょっとした一人語りのシーンで、コステロの人物像がよく分かる。

魅力的で、尊敬を集めており、人を引き付ける求心力を持った男。自信たっぷりに語る姿はコステロそのもので、一気に物語に入っていけます。

 

NYで活動する彼らは、消防士であるマイケル(浦井健治さん)のアパートを隠れ家にしている。物語はほとんど、このアパートの一室で繰り広げられていく。IRAのメンバーである彼らの身に、ほぼ10年ごとに起こる出来事と心情の変化を描いています。

はじめは自分たちの正義を信じて疑わなかったコステロ、ルエリ、マイケルだけど、事が起きるたびに少しずつ信念のゆらぎや疑問があぶりだされていく。

とてつもなく有能なのに、女性であるために幹部にさせてもらえないエリザベス(明星真由美さん)が粛清のために連れ去られるシーンはすごく怖かったわ!

ビッグ・フェラーは音の効果がすごく効いてたと思います。効果音楽などはないんだけど、事が起きた後に訪れる静寂が、すごく力を持ってたと思う。エリザベスが連れ去られるシーンの音楽音量も、ラストのマイケルのアパートの静寂も、本当に本当に効果的。

匿っているうちにエリザベスと深い仲になっていたマイケルの苦しみ。虚栄心が強く愚かだけど憎めない人物だったルエリ(成河さん)の変化。冒頭アメリカンドリームを手にし自信満々だったコステロも、少しずつ少しずつ大切なものを失っていく。

誰かがFBIに密告している、という疑いのなか、活動を続けるメンバーの、それぞれの変化がじっくりと描かれていました。

 

密告者を見つけるために本国から派遣されてきたアル中のIRA幹部、フランク(小林勝也さん)に、若い二人がリンチを受けた報復に、コステロが酒を飲ませるシーンがまた秀逸。

分かりやすい暴力で蹂躙しようとするフランクに対し、上質の酒を飲ませるコステロが怖い

フランクはアル中の更生プログラムを受けていて、もう少し!のところなのを知っていて、顔に酒を塗りたくり、口に注ぎ込む。

そう乱暴なことはしていないのに、これ以上の暴力ってある?と思わされるような怖さと、コステロという男の本質が見えて、とても大事なシーンだと思いましたね。

そしてコステロが魅力的な人物であればあるほど、じわじわと向こう側から破滅が近づいてくるのを感じるの。

物語終盤、冒頭と同じようにひとりで演説するビッグ・フェラー。自分こそが密告者だったと告白する。黙って姿を隠すこともできたのに、それでも「ビッグ・フェラー」と呼ばれ続けたかった、と吐露する彼の選んだ道は────

引き金を引いたのは誰なのか?

ラストシーン、同時多発テロが起きた2001年9月11日、消防士であるマイケルが出勤していく場面で終わりますが、果たして彼の運命は?

などなど、はっきりと提示されず観客に解釈をゆだねていると感じる部分も多くありました。

報復は新たな報復を呼び、憎しみの連鎖は止まることを知らない。IRAなんて対岸の火事のようにしか思えない日本人の私たちにも、考えるべきことがあるんじゃないか、と思わされるお話でした。

物語の中盤に出てくる、イスラムのテロ組織は何がしたいのか?何を求めているのか?というマイケルの問いに、コステロが答える「人はただ、人を罰したいのさ」というセリフが、とても印象的でした。

↑↑↑↑↑ ここまで ↑↑↑↑↑

 

難解でもあるけど、ところどころでかなり笑えるの。それがすごく上質だと感じましたね。

訛り全開で、愚かで下品なルエリと、ひたすら真面目なマイケルとの対比も可笑しいし、粗暴で野卑な警官トム・ビリー(黒田大輔さん)のステレオタイプな差別主義者ぶりも可笑しい。

軽妙なセリフの応酬で笑わされているうちに、一転してシリアスになる展開は見事なもの。私には音の効果がすごく感じられたし、胸に迫った。もちろん、役者さんたちのしっかりした芝居があってのことだと思いますけどね。

 

浦井健治さんはお名前はよく見るんだけど、舞台で観たのは初めて。成河さんは、失礼ながら私は今回初めてお名前を知りました。

おふたりとも内野さん演じるコステロと話すシーンが多いんだけど、よく勉強されたんでしょうね~、説得力のあるセリフと表情で、すごく感情移入できました。

終演後、翻訳の小田島さんと演出の森さんのポストトークがありました。お芝居が終わったのがもう夜の10時過ぎで、どうしようかと思ったけどせっかくの機会だし、お話を聞きたいと思って残りましたとも。

ビッグ・フェラーは3年ほど前から企画していたそうで、実際にこうして公演できるようになるまでにはとても時間がかかっています、という話から。

最初は内野さんたちも、IRAという日本の日常から遠すぎる設定に、「訳が分からない」とおっしゃっていたとか。

しかし内野さんはとんでもない稽古好きなんだそうで(笑)、コステロという役を落とし込むために、演出家も読んでない本を読んだりしていたそうです。

「理解していない台詞は、観客に届けられない」とおっしゃっているとか。職人気質ですね~!

 

上演が始まってからも、毎日稽古は続いているのだとか。プロデューサーさんの「稽古はいつまで続くのですか?」という質問に、演出の森さんが「たぶん千秋楽まで続きます・・・」と答えて会場大笑い(笑)

役者の皆さんは笑ってる場合じゃないですね。毎日の本番をしながら、稽古の日々ってどんな感じなんでしょうか。良いものを作ろうという情熱がなければ、とても続けられないと思います。

他にも、IRAの話というより、ある信念を持った人々の日常の話であるということ、テーマはテロではなくアイデンティティであること、ルエリ役は最初から成河さんでいこうと思っていた、という話などがありました。

翻訳劇だけど、日本人には伝わらないと思われる部分はちょっと変えてる、なんて話もされていましたね。

そして最後には、ぜひ男性にもっとたくさん見てほしい、というお話をされていました。

確かに、舞台を観に行くたびに思うけど、舞台の観客って女性の方が圧倒的に多いんですよね。作品のテーマといい、確かにもっと男性に多く見てもらいたいかも、と思えるお芝居でした。

ビッグ・フェラーは2014年6月8日までが世田谷パブリックシアターで上演、その後は兵庫、新潟、名古屋、そして最終は7月5日の滋賀と上演される予定です。

とても素晴らしい舞台でしたから、機会があればぜひ!男性も女性もご覧になって、と思える舞台でした!

しかし今年は舞台見てるな~、わたし(笑)

  カテゴリー:映画・観劇  



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