まみろうチャンネル
まみろうチャンネル > 映画・観劇 > 舞台「サバイバーズ・ギルト&シェイム」を観てきました

舞台「サバイバーズ・ギルト&シェイム」を観てきました

紀伊国屋ホールで上演中の「サバイバーズ・ギルト&シェイム」を観てきました。

テーマは重い。すっごく重い。のに、楽しくて笑ってしまう。

そして観終わった後にはしみじみと考え込むという、素晴らしい作品でした(喜)

出演は山本涼介さんをはじめ6人。演出は鴻上尚史さん。鴻上さんの演出作は、DVDやTV放送されたものしか観てなかったんですよね。

生で観るのは初めてで、楽しみにしておりました。

 

個人的にサバイバーズ・ギルトという言葉に反応したというのも、このお芝居に興味をもった理由のひとつ。

サバイバーズ・ギルトは心的外傷後ストレス障害(PTSD)のひとつと考えていいのかな。

生存が困難と思われる状況に置かれながらも生還し、同じ状況で命を落とした人たちに対して

「自分は生き残ってしまって、申し訳ない」

と罪悪感を感じている状態。

これね、東日本大震災の時、大津波に襲われた地域で生き残った若い人が、

「年寄りがやっと歩いて逃げていたのを助けもせず、その横を走って逃げて、自分は助かった」

って思いから抜けられず、苦しんでいる話を聞いたの。その時、

「ああ、それがサバイバーズ・ギルトなのね」

って思って以来、ちょっと胸に残ってる言葉なのでした。

 

さてさて、それでは あらすじを。まだまだ上演中ですし、別枠にしておきますね~

 

↓↓↓↓↓ ここから ↓↓↓↓↓

舞台は奥の壁面が迷彩柄。階段上におかれたセットの中心には、煙突のような円柱形の物体が。

オープニングは役者の皆さんが舞台に登場。山本涼介さんは迷彩服を着て舞台の中央に。南沢奈央さんはビデオカメラを持って、伊礼彼方さんはオレンジ色のハッピでマイクを持ち、歌いながら登場。いい声なんだ、これが(笑)

大高洋夫さんは自転車に乗って登場し、片桐仁さんと長野里美さんも現れ、全員揃ったところでダンス。台詞もなく、彼方さんが歌い終わると背景にタイトルが映し出されました。

暗転後、迷彩服を着た明宏(あきひろ・山本涼介さん)が家に帰って来たところから、お話は始まります。

※基本、話の流れだけを書くので、重苦しくシリアスな印象を受けるかもしれません。が、かなりコミカルで大笑いの連続だったことを、先にお伝えしておきます(笑)

 

畑仕事をしていたらしい母、瞳子(とうこ・長野里美さん)は息子が無事、戦場から帰って来たことを喜ぶが、明宏は「自分は実は死んでいる、やり残したことがあるので成仏できずに帰って来た」という。

どこからどう見ても生きている明宏の言い分に当惑する瞳子だが、とりあえず息子が帰って来たことには間違いない。

ご馳走を作るから、と上機嫌な瞳子は、岩本(大高洋夫さん)と来週、結婚する予定だという。だが明宏の兄、義人(よしひと・伊礼彼方さん)は、それに大反対しているらしい。

それどころか岩本と目を合わせず、声を聞くと「犬が吠えている」などと言い、侮蔑している様子。

義人は岩本だけでなく、帰って来た明宏のことも罵る。お前は死んでない、逃げて来たんだ。戦場へ戻れ、という義人。

義人は心臓が弱く、そのために兵士として戦場へは行けず、カラオケボックスで働いている。外見は健康そのものに見えるため、「元気なのに戦場へ行かない男」として近所の人々から白い目で見られていた。

義人自身も、戦場へ行けない自分を恥ずかしく思っているようだ。

 

明宏がやり残した事とは何か。それは大学で所属していたサークル、映画研究会にあった。明宏はサークルの先輩、夏希(なつき・南沢奈央さん)をヒロインにした映画を撮りたかったのだ。

明宏は「あの世へ行くために、やり残した映画を撮らせてください」と夏希に頼むが、夏希はそんな気分になれないという。

彼女以外のサークルのメンバーは、部室に集まったところに爆撃を受け、全滅してしまった。彼女は集合時間に遅刻して、生き残った。

時間を守った仲間は死んで、遅れた自分は生き残った。そのことで罪悪感を感じ続けている夏希。しかし明宏に協力することで、気持ちに踏ん切りをつけられるかもしれない、と考え直し、撮影に協力することにした。

夏希が出演を承諾したので、映画を撮り終えたら明宏は成仏してしまうのか?と瞳子が悩んでいたところへ、明宏と同じ部隊で上官であったという榎戸(えのきど・片桐仁さん)がやってくる。

榎戸は「明宏さんは死んでいません。死んでいるのは自分です」と言う。榎戸は明宏に、自分が特攻作戦で死んだことを証言してくれ、という。

ただの戦死でなく、特攻作戦での戦死は二階級特進になり、残された遺族が受け取れる年金額が増えるためだ。

明宏は死んでいるから証言は出来ないと断るが、榎戸はそのまま家に居座る。

 

やがて映画の撮影が始まる。このご時世に映画撮影は非難されるに違いない。とっとと終わらせるためにと、全員を巻き込んで撮影は続けられる。

題材は「ロミオとジュリエット」を元にした、格差幼稚園に通う園児同士の恋物語。夏希のものすごい働きによって、撮影は順調に続けられた。

不眠不休で働き続けられる自分に、夏希は違和感を感じる。

あと1日で撮影が終わるところまで進み、お祝いにと瞳子が闇市で肉を手に入れてくる。久しぶりの団欒に浮き立つ明宏たちだったが、乾杯の段になって、岩本が突然ビールを肉にぶちまけ、走り去る。

岩本は義人と初めて会った時にも、同じようなことをした。義人が瞳子の再婚に反対し、岩本を侮蔑しているのも、その時のことがあったからだった。

 

翌日、明宏はもう撮影は出来ないと落胆していたが、岩本は戻って来た。自分のせいで作品が完成できないのは申し訳ないと考えたのだという。

そして撮影の大詰め、岩本の奇行の理由が明かされる。彼は津波で前妻と娘を失っていた。家から離れたところにいた岩本は、妻子に逃げろと連絡したが、助けには行けなかった。

大きな波が迫っていた。間に合わないことが見て取れて、怖かった。自分は助けに行けなかった。

その事は岩本をずっと苦しめていた。新しい家族を持つことは、死んだ妻子への裏切りだ。岩本はそう感じ、団欒の場になるとぶち壊してしまうのだった。

それぞれが「生き残ってしまった罪悪感」に苛まれ、苦しんでいる。明宏と榎戸は、どちらも死んでいない。特攻作戦はムダになることが分かっている愚策だった。それでも同部隊の人々は、作戦を遂行し死んでいった。

榎戸は戦場で明宏に、それぞれ逆方向に逃げることを提案した。この方法ならどちらかは生き残れる、と言い、敵の戦車の前に飛び出したのだが、ふたりとも生き残った。

作戦を遂行し死んだ仲間に対する罪悪感から、死んだと思い込んでいただけだった。

死んでいることに気付いていなかったのは、ふたりではなく、夏希だった。夏希は明宏に、生き残った者には、やらなければならないことがある、と告げ、消えていく。

義人と榎戸は、隠れて暮らすことにした。岩本は瞳子と、隠れて暮らすふたりのサポートをすることにした。そして明宏は必ず帰ってくるといい、戦場へ戻っていく。

 

みんなトボケていい味で、笑っちゃうったらないの、こんな話なのに(笑)

片桐さん演じる榎戸がもう、自分勝手で空気も読まないし、どうしようもない男なんだけど、なんか憎めない。

明宏に別方向に逃げればどちらかは生き残れる、と提案して、半ば強引に走りださせた後、敵戦車に向かって自分の存在をアピールするところで、榎戸さん大好きになる。

彼は決して、愚かな部隊長ではなかったのね。片桐さんのことは元々、かなり好きなんですけど、より一層好きになりました(笑)動きもトリッキー、台詞の間や緩急もサイコー。そして何をしても言っても、ピュアさがあるの。不思議な人ですね~

 

大高さんは気の良いおっちゃんなのに、ふと人が変わってしまう瞬間が不気味。そしてその理由が語られるところでは、今まさに津波が迫って、彼の妻子が飲み込まれているように感じて、たまらなかった。

南沢さん演じる夏希は、一番精力的に生きてる女の子、と思ったら死んでいたっていうね。

死んでいった人に報いることなんて出来ない。でも、実は死んでいる夏希がサバイバーズ・ギルトを語り、消える間際サバイバーズ・ミッションを語るのが、生き残ってしまった人々にとっての救いになったと感じたわ。

明宏役の山田さんは初めてお仕事を観ましたが、お顔立ちがハッキリしてますね・・・太マジックで描いたようなお顔だなと(失礼

飄々としていながらも、必死で生きた証を残そうとする姿が、好感度抜群でした。園児のロミジュリの劇中劇では、でちゅまちゅを交えたシェイクスピアのセリフ回しが、めちゃくちゃ可笑しい(笑)

大変だったろうなぁ、あれ。

 

そして彼方さん・・・いい声だ~!!いや知ってますけどね、歌声は何度も聴いてるし。それでもしみじみ「いい声だ・・・」って思った。

登場時はオレンジの法被で笑わされちゃうし、劇中の曲では泣かされるし、ラストの曲ではアガります。彼方さんの歌唱力と、演技力あってこその義人でした。

ラスト近くのまさかの展開は、ネタバレ絶対したくない。劇場で観てください。

私、「そんなんアリか!!」つって涙流して笑いました(笑)

 

↑↑↑↑↑ ここまで ↑↑↑↑↑

 

登場人物の中で、唯一、生き残った罪悪感や、戦場に出られない恥を感じていないのは、長野さん演じるお母さんだけ。

なんだけど、実は「息子を戦場に送る」という、大きな犠牲を払ってる。戦争が始まれば、多くの女性が直面することだよね。

サバイバーのギルト(有罪・罪悪感)もシェイム(恥・残念)も感じる立場にない母親が、何かにつけ

「お腹すいてない」「何か食べる」「ご馳走作るよ」

と、食べることを勧めてくるのが印象的でした。

食べるって生きることの根っこにある行為。戦場という死地とは対極に、生かそうとする意識が母親にある、というのが、私にはすごく、胸にきました。

 

極限の状況に陥って生き残った人が、死んでしまった人たちに対して罪悪感を感じるのは、理屈で止められることじゃないとは思う。

でも、不毛だよね。自分は死んで何も感じなくなり、自分を大切に思ってくれる人たちが悲しんで、その方が良かった、なんて思えないし。

何かことが起きた時、その瞬間に「生き死に」を決めるのは運しかない。生き残って辛い思いをして、死んだ方が良かったと思う場合もあるし。生き残ったことは、ズルの結果じゃないし、恥じゃない。

当事者になることがあっても、そう言い切れるかは分からないけど。平和な場所と国(今のところね)に暮らす身としては、そう思う。

サバイバーズ・ギルト&シェイムは2017年12月4日まで、新宿 紀伊国屋ホールで公演です。
(詳しくはコチラで ⇒ サバイバーズ・ギルト&シェイム KOKAMI@network

ああーもっと色々感じたんだけど、書ききれないわ。明快なようであちこちに含みもあるお芝居。すごく良かったです~!

  カテゴリー:映画・観劇  



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このページの先頭へ戻る