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舞台「鱈々」を観てきました

天王洲銀河劇場で2016年10月30日まで上演中していた、舞台「鱈々」を観てきました。

主演は藤原竜也さんと山本裕典さん。ふたりは狭い倉庫で働く男たち。

その静かな生活に入り込んで、2人をかき乱す女性に、中村ゆりさん。

その父親で、ふたりが働く倉庫に荷物を運んでくるトラック運転手に木場勝己さん。

出演者はこの、たった4人。少人数の芝居っていいよね。大人数が入り乱れる舞台もいいけど、少人数でぐつぐつ煮込んでいくような芝居も、ここんとこすごく好き。

さて鱈々は韓国を代表する劇作家である李康白(リ・ガンペク)氏の作品。韓国では1993年に発表されて以来、何度も繰り返し上演されてるんだそう。

私が観に行った日は、平日の昼間の回だったんですけど、3階までたくさんお客さんがいましたよん。

東京公演はもう少しで終わっちゃいますけど、まだまだ地方公演もあるので、あらすじは別枠にしておきますわ。

 

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開演前から幕が開いている舞台には、無数の木箱が積み重なっている。箱にはそれぞれ番号があり、床から天井までびっしりと積み上がっていた。

上手と下手にはそれぞれ、寝床と荷物があり、薄暗く埃っぽい様子が見て取れる。

舞台奥の、光が狭く差し込む場所から、木箱を縦型の台車に積んだ青年が入ってくる。彼はジャーン(藤原竜也さん)。この倉庫で暮らし、ずっとずっと昔から荷物の管理をしている。

ジャーンは伝票と箱をひとつひとつ突合せ、間違いのないように、指示通りに積み上げていた。

そこにぶつくさ文句を言いながら入って来たのはキーム(山本裕典さん)。彼はジャーンの正確無比な仕事をあざけり、こんなものは適当に積んでおけばいいと言う。

彼らは箱に何が入っているのか知らない。どこから運ばれてきて、どこへ行くのかも知らない。ただ、伝票に書かれたとおりに管理しているだけ。

 

ふたりはずっと、長い間この倉庫で暮らしてきた。ジャーンは今までも、これからも、与えられた仕事を完璧にこなすのが、価値のあることだと信じている。そんなジャーンと違い、キームは単調な毎日に心底嫌気がさしていた。

ジャーンはキームに説教もするが、身の回りのことなどまるで母親のように世話を焼き、面倒を見る。キームはそんなジャーンを鬱陶しいとも感じているようだ。

ある日、キームはひどく酒に酔い、女性に介抱されながら倉庫に帰ってくる。キームを連れて来た女性はミス・ダーリン(中村ゆりさん)。

酒に強く、このあたりの倉庫番とは全員と寝た、という彼女は、酒でつぶれたキームをよそに、ジャーンを誘惑するがジャーンは応じず、彼女を帰らせる。

翌日、ジャーンは二日酔いのキームのために、干した鱈の頭でスープを作り、ふたりで飲んでいた。そこに、荷物を運んでくるトラック運転手(木場勝己さん)が倉庫に入って来る。

彼はミス・ダーリンの父親だという。ミス・ダーリンと結婚し倉庫を出たがっているキームを「婿さん」と呼び、博打や酒に誘う運転手。

ジャーンはミス・ダーリンのことも、運転手のことも疎ましく感じ、彼らに振り回され倉庫から出て行こうと考えるキームを心配している。

 

倉庫の外へ出ていこうとするキームは、荷物の管理もどんどん雑になる。

ミス・ダーリンや運転手とのことをジャーンに咎められる腹いせもあり、トラックに積むはずの荷物のひとつを、ワザと別の箱と取り換えてしまった。

ちょっとしたことから口論になり、そのことをキームに告げられたジャーンは、ひどく狼狽するが他の者たちは取り合わない。

ミス・ダーリンは残された箱を開けて中を見ようと言い出す。

必死で止めるジャーンをよそに、ミス・ダーリンは箱をこじ開けて中身を出してしまう。

箱の中身は、用途が分からない金属の部品だった。

開けてはならない箱を開け、違う箱を送ってしまったことに責任を感じるジャーンは、箱の持ち主に宛てて反省と、何らかの処分を望む手紙を書く。

それを運転手に預けようとするが、運転手は

「そんなものは持ち主まで届かない」

といい、手紙を破り捨ててしまう。

ミス・ダーリンが妊娠したのをきっかけに、いよいよ倉庫から出ていくキーム。運転手の助手になるのだという。

ジャーンはふたりで使っていた荷物のほとんどと、保管しておいた干した鱈の頭をキームに渡す。

後にひとり残されたジャーンは、また黙々と箱を整理し、積み上げるのだった。

 

とても静かで、物悲しく、でもところどころ滑稽で笑ってしまうお芝居だった。

指示と違う荷物を送りだしてしまったジャーンが、とんでもないことをした、ふさわしい罰を私に与えてください、と手紙を書くシーンは鬼気迫るものがあったわ。

 

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単調で、なんの意味があるのか分からない作業でも、これまでの人生のほとんどを費やした意味があって欲しい、と願うジャーンの気持ちも分かる。

でも一方では、たぶん大したことじゃない、箱は間違えられても、いくらでもリカバリが利いてしまうだろうという予想もついて、なんとも言えず悲しい気持ちになった。

運ばれていく荷物のひとつひとつが、まるで自分たち人間のようでもある。大きな部品を作るための、ひとつひとつでは何の意味も、力も持たない半端な部品。

中身が何かは記されておらず、外から見ても中を見てもその価値は分からず、特にかけがえのないものでもない。

そんな風に受け取れてしまって、大きなショックはないけれど、

「あんたはどうなの?」

と問いかけられてるみたいだった。後々までじんわりしみこんでくる感じのお芝居でした。

 

銀河劇場で観る藤原竜也くんって、他の劇場で観るときと違っていつも意外な印象を受けるのはどうしてなのかしら。今回の鱈々では、物静かでちょっととぼけた、意気地なしともいえるような男の子だった。

お母さんのようにキームの面倒を見て、「お前が心配だ」「お前を愛してる」って言うんだけど、誰にも渡さない!とかいう執着は見せない。なんていうんだろ、隅々まで行き届いた諦念を感じるというか。

キームはまだ、倉庫から外へ出れば違う世界が広がっている、と信じてる分、希望があるのよね自分の人生に。でもジャーンにはそれがない。

「ここから出たって、もっと大きな倉庫が待ってるだけだ」

という彼の世界観には、希望も、世界への信頼もない。せめて誠実に生きることで、人生に意味をもたせたい、と願っているのに、それが叶わない。

絶望しても続いていく人生の、なんと無味乾燥なことか。

 

山本裕典さんを舞台で観たのは初めてでしたが、期待以上に良かった。イラついてても憎たらしくない、庇護欲を刺激される男の子をうまく表現してたと感じる。

ちょっと足りないというか、鈍くさいとこもあって可愛いし(笑)

だらしなくて薄汚れた倉庫番ってイメージの役なんだけど、山本くん自身に清潔感があって、獣臭さみたいなのを感じないの。

だから藤原くんが「お前を愛してる」って言っても、BL的じゃなく、家族愛みたいなのを感じるのよね。

だいたい男同士でも、男女でも、性愛を感じさせるのは容易だと思うの。淫靡な雰囲気って、作りやすいものだと思うし。

そうじゃない「愛」ってなかなか難しいよね、上っ面にならず観ている方に伝えるのは。このへんは演出と、役者の力量によるものなんでしょうね。

 

トラック運転手が木場勝己さんですごく良かった~(嬉)

娘の彼氏をイカサマで次々カモにしていくんだけど、意外と筋が通ったことを言うし、倉庫番の二人よりオシャレなのがまた良かった。木場さんも声が好きだなぁ。

ミス・ダーリンの中村ゆりさんは、きわどいこと言ってもやっても、品がない感じにならなくてこれまたステキ。箱を力づくでこじ開けるシーンがすごく良かった。

登場人物の中で、一番真実を欲しがってる女の子を好演されてました。ああまた好きな役者さん増えちゃったし。

ラスト近く、ジャーンが干した鱈の頭を掲げて、生きていくことの意味を問いかける。それを見た時、2015年に観たハムレット(これも主演が藤原竜也さん)での、頭蓋骨を掲げ 人生の意味を問いかけるシーンを、思い出してちょっと泣けた。

観た人の人生観によっても、置かれた状況によっても、違った意味を持って見えそうなお芝居でした。

  カテゴリー:映画・観劇  



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