わたくしは、「自分探しをしたい」なんて言う人は大嫌い。
その言葉には、「本当の自分はこんなんじゃない」という、現在の自分に対する否定が感じられるから。
でもこの本を読むと、自分探しというのはそんな単純なものではないようです。
この本、「男のための」と銘打っているとおり最初は「男性が幸せだと感じる条件と、その理由」について語っています。なので最初は、モテ男になりたい人のための啓蒙書かと思ってしまいます。
でも読み進めていくうちに、話はだんだん哲学的な方向に。
それもそのはず、著者の伊藤健太郎氏は哲学者でありました。
あらゆる生き物の中で、人だけが、自分がいつか死ぬことを知っています。
生に制限時間があることを知っているからこそ、「なぜ生きるのか」を考えずにはいられない。そこに人として生まれた苦しみがある、と説いた哲学者は多くいます。
伊藤氏はたくさんの哲学者の言葉を紹介しながら、「人が幸せになるためにすることは、実は身体を喜ばせることであって、魂を喜ばせることではない。そのことに気づかないと、真に幸せにはなれない」ということを説いていきます。
「感情のまま、好きに生きるのが自由ではない」と気づいた人が、「自分探し」を始める・・・そう聞くと、単純に「今のお前が、現時点での本当の自分だ」などと決め付けてはいけないような気になります。
でもね、実際には「自分探しをしたい」とか言って外国に行っちゃったりするタイプの人は、現在自分がいる場所は、自分が選択を繰り返した結果たどり着いた場所だってことを忘れてる人が多いと思っちゃうんですよねー。
自分が選んだ道の先に、今自分が立っている。
その前提は忘れてはいけないと思うんですよ。
「選択が間違いだった。私が目指していたのはここではなかった。私が望んでいた場所を、今からでも目指そう」
って思っての自分探しなら、いいんだけど。
自分の人生の失敗が多くて、思い知らされたからそう思うのかも知れませんけどね。
この本、文章も難解でなく、卑近な例を挙げて説明してくれるので、非常にわかりやすい。
導入部は愛について、性について、結婚について語りながら、徐々に心の話に移っていく。難しい話題に、すんなりと入っていけるので、とても素直に読めました。
20代後半から、40代の人(特に男性)にお勧めの本です。